会社では、長年、ソフトウェア開発委託、業務委託などの請負契約、ライセンス契約、外注管理業務に関わっていました
実務経験から考慮しておいたほうがよいと考えられる、フリーランスエンジニアやライター、受託業務を行っている会社などが仕事を請け負う際の業務委託契約に関する注意事項です
実務経験はありますが法律家ではありませんので参考までとしてください
契約はリスクマネジメントのために行うものだと思っているのですが、委託業務の場合、発注者側のためのリスクマネジメントです
もし何かあった場合に発注者側の損害を最小限に抑えるためのものなので、逆の立場の受託者を守るための契約ではないということを認識しておく必要があります
フリーランスエンジニアも業務委託契約書の内容を知ろう!
契約内容を把握しないまま契約締結しているケースが多いです!
日本の受託業務を請け負う企業にしても、フリーランスエンジニアにしても、業務を遂行する人が締結する契約の内容を十分に把握しないままにしているということが多いです
受託側の立場が弱いこともあって、提示された契約を受け入れざるおえないという事情もありますが、日本企業と海外企業では仕事を受ける側の契約に対する意識がかなり異なります
契約に対する意識が低かったり、受託側は小規模事業者やフリーランスなどの個人事業者であることも多く、法的サポートを十分に受けるのが難しいという面もあります
しかし、海外の会社は日本の会社と異なり、契約に書かれている義務も権利もしっかり確認してきますし、譲れないところや不利になる条件は交渉してきます
内容を知らないまま契約してしまうと後でこんなはずではなかったということになりかねないので、契約を変えられないとしても契約内容は知っておきましょう
疑問点や不明確な点は、発注する側に書面やメールで質問して、回答内容をしっかり残しておくというのも後で役に立つ場合があります
ネット上で見ることのできる業務委託契約の情報というのは、発注企業の立場で発注側が不利にならないように「こういう条項を書いておきましょう」という内容が多いようです
受託する側もしっかり契約の内容を把握しておいてください
契約書や利用規約などは「サインしてください」と言ってくるほうに不利益が生じないようにするためのものがほとんどで、内容をよく知らないままだと、何かあった場合には思わぬ責任を負わされるか、うちには責任がありませんと言われるかになるということを知っておいてください
業務委託を受けるときの仕事の取り決め内容
仕事の発注を行う際に何を決めておかないとならないかは下請法の親事業者の義務が参考になります
立場の弱い下請け会社が不利な条件で仕事をすることにならないようにこれだけは合意しておかないとならないという条件です
公正な取引を行うため、立場が弱い側が不当に不利にならないように法律が定められており、罰則もあります
下請法が適用になる取引には関係する会社の資本金額や業務内容などの条件がありますが、仕事を受けるときにどんなことを明確にしておかないとならないかの参考になります
書面で明確にして、しっかり残しておきましょう
明確にしておかないとならないことを明確にしてくれない発注者には注意が必要です
業務委託契約・請負契約の内容について
仕事を受けるときには業務委託契約や請負契約などの契約を締結します
受託側から契約書面を提示するというのは立場上なかなか難しい場合が多く、発注側の会社から提示されることが多いです
契約の名前はいろいろありますが、やってはいけないこととか、もし何かがあったときにどうするかを決めておくというのが主な内容です
契約違反すると支払いをしてもらえなくなったり、場合によっては損害賠償を請求されたりもするので、どんなことが決められているのか知っておくことは重要です
発注側から提示される業務委託契約や請負契約というのは、もしもの場合に受託側を守ってくれるものではありません
契約書を用意する発注側が不利にならないように規定されている内容がほとんどです
損害賠償の上限
契約に何も書かなかったり、損害が発生した際には損害賠償するという取り決めだけだと損害賠償額に上限がありません
上限が規定されていないと、個人のフリーランスエンジニアだとしても、もし万が一損害を与えたときにいくらまで賠償するかが青天井になります
重過失・故意の場合のみ上限なしとか、委託金額を上限にするとか、受託側は責任を最小限に抑えるために条件を設けたいところですが、発注側は上限設定を受け入れてくれないことも多いです
損害を生じさせてしまった場合には、損害の責任を全部負わされることがないように交渉することが必要になります
市場に出るようなものだと、市場に出て消費者に損害を与えた際に、その損害の責任をすべて負わされるようなことになると損害額が莫大になりますが、すべてを負わないとならないかというとそうでもありません
一方的に受託側が責任を負うとも限らず、受け入れOKとした納品物は受け入れ側にも責任があります
故意に損害を与えるようなことをしたとか、通常考えうるような注意を怠り重大な過失を犯したというようなことがなければ、それ相応の責任分担になるように交渉することになります
しかし、業務の内容によっては損害が莫大になることもあるわけなので、どんな影響のでる業務を請け負っているのかは十分検討するなり、発注側に質問して記録を残しておくなりしておきましょう
瑕疵担保責任
受け入れ時に見つけられないような隠れた瑕疵(キズ)は納入後でも対応しないとならないということです
納入後にプログラムのバグが発覚するというのはよくあることです
期間の取り決めをしていなくても1年間は必要になります
瑕疵担保期間が長く設定されたり、無期限にされるようなことがないように確認しておくことが必要です
瑕疵の内容により、瑕疵担保期間外でも対応するように定められているケースもあります
瑕疵は無償で対応してくださいということがほとんどです
瑕疵の取り決めによっては、すぐ対応しろとか、瑕疵による損害を補償しろということもあるわけで、業務が終わった後も影響がでることになります
再委託禁止・再委託許可制
多重で請負されると中間マージンが取られるとか、責任が不明確になることも多々あるので、再委託させないように禁止することもよくあることです
禁止なのに再委託していて、契約違反が発覚したり、問題を発生させたりすると契約を切られたり、賠償請求されることもあります
発注側は、問題を起こしたのが再委託先だとしても、解決は一次受託者の責任として追求することになります
著作権権利譲渡
著作権は、発注側に譲渡することと取り決めることが多いです
文章やデザインだけでなく、ソフトウェアのプログラムも著作物であり、著作権があります
報酬は、著作権を譲渡するのであれば、著作権も含めて発注側のものにするという条件も含んだ対価ですという取り決めをすることになります
著作物を、受託側が自分のものとして使えるようにしておくには、「著作権譲渡すること」という条件を契約に入れないようにしておく必要があります
発注側が認めるのであれば、自分でも使えるように著作権を譲渡せず、使用権等に限って認めるという方法もありますが、著作権譲渡も含めた対価を払うのだからと認めないこともよくあります
下請法上は、著作権・知財権などを「一方的」に譲渡させることはできないとされていますが、「一方的譲渡」ではなくするために、発注側は契約書などで著作権譲渡を記載し合意するようにします
契約書などで合意していれば「一方的」ではなくなります
知的財産権譲渡
特許化する発明なども著作権と同じような取り決めになります
第三者知的財産権侵害
他者の権利を侵害しているものは使ってはいけないということです
他者・他社の権利を侵害していないものを納入するという取り決めで、もし使っていて損害が発生したら受託側が責任を負うと取り決めます
損害発生の補償だけでなく、権利侵害を訴えてきた相手との問題解決交渉も受託側が行うように規定される場合は多いです
発注側に一切面倒をかけるなという契約です
発注側が、権利侵害を訴えてきた側と賠償について交渉し、取り決めたら、権利侵害物を納入した受託側に有無を言わさず、賠償責任はとってもらうと決めておくこともあります
受託側は、発注側にも著作権の権利の保有者側にも損害賠償や問題解決交渉が必要になります
コピペ、パクリは大変危険でやってはいけないことです
発注側も損害を受けるし信頼をなくすことになるので厳しく対処してきますし、当然受託側の信頼もなくします
競業避止規定
同じ業界の競業する仕事を受けないことと禁止規定がもうけられることがあります
全く禁止されると専属でやるしかなくなり、他の仕事に支障がでるので条件を明確にしておく必要があります
事前に届ければよいのかとか、競業にあたる業務の範囲はどこまでかとか、競業にあたる会社や事業は何かなど、自分の仕事が不当に縛られて自由が利かないようにならないことが必要です
反社会的勢力排除
反社会的勢力はつきあわないこと
秘密保持契約
秘密情報の定義
受け取った情報をなんでも秘密とされていては対応できなくなります
渡したものはなんでも秘密だという契約は注意が必要です
秘密情報の定義は明確にしておきます
公知周知の情報は秘密ではないのですけれど、公知周知だからと思って他人に伝えたことが契約には渡したものは何でも秘密だと書いてあるから契約違反だと後で言われては面倒な争いごとになります
公知周知の情報、聞く前にすでに知っていたこと、自ら考え出したものなど、秘密情報から除いておかないと、他の仕事への影響が大きくなります
秘密の情報が、まる秘とかConfidentialと明記すると規定されていると明確ですけれど、そう規定してくれることは少ないです
受託側から渡す秘密情報提供の扱いにも注意が必要です
秘密情報の提供が発注側からの一方的なものになっていないかは確認しておきましょう
相互に保持が必要としていなくて、発注側からの提供のみの一方向になっていると、秘密のつもりで渡した情報が自由に使われることになります
秘密のノウハウも、そのままでは特許でも著作物でもないですから、特許権や著作権では保護されないです
また発注している業務や契約を結んでいることが秘密保持の対象とされていることもありますから注意しましょう
受託業務や契約が秘密と規定されているのに、ここの会社の仕事をやってますとか、この仕事は自分がやりましたと口外すると契約違反になってしまいます